2016年4月26日火曜日

定期演奏会のご講評をいただきました

吹奏楽ライターのオザワ部長が定期演奏会の講評を書いてくださいました。
たくさんの方々に応援頂き、演奏会を実施できたということをあらためて感じました。
これからも日々練習に励みたいと思います。

以下、オザワ部長の記事の転記です。




【東京ブラバンガールズ】
〜藤村女子中学・高等学校定期演奏会レポート〜
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こんにちは。オザワ部長です。
3月にドキュメンタリー書籍『きばれ! 長崎ブラバンガールズ 藤重先生と活水吹部7か月の奇跡』を出版しましたが、「長崎ブラバンガールズ」とは長崎県の「活水中学校・高等学校吹奏楽部」のことです。
そして、実は東京にも「東京ブラバンガールズ」と呼ぶべき学校があります。それがオシャレタウン・吉祥寺に学校がある「藤村女子中学・高等学校」です。
この2校を「ブラバンガールズ」と呼ぶのには理由があります。まず、女子校であること。さらに、もともと吹奏楽の強豪校ではなかったこと。中学生と高校生が一緒に活動していること。
そして…2015年度から名指導者を迎えて、新たなチャレンジを始めたこと!
そうです。活水には福岡県の精華女子高校から藤重佳久先生がやってきましたが、藤村女子には埼玉県の春日部共栄高校から都賀城太郎先生がやってきたのです。
藤村女子の部員は、中学生1名と高校生6名のたった7名。「小編成」よりもさらに小さい「極小編成」です。都賀先生にとっては、前任の春日部共栄とはあまりに大きすぎる差だったことでしょう。
それでも昨年8月の東京都高等学校吹奏楽コンクール・BII組では、見事ゴールド金賞を獲得! 小編成では最上位大会となる東日本学校吹奏楽大会への代表には選ばれませんでしたが、充分すぎるほど立派な結果を残しました。
さらに、10月の日本管楽合奏コンテスト・高等学校A部門(全国大会)にも予選審査を突破して出場。小編成であるA部門でも最少人数10名という規定があったものの、なんとソフトボール部とボーカロイド研究会(!)からの助っ人3名を加え、ギリギリ10名で挑みました。その結果、最優秀賞とフォトライフ賞を受賞!
以上のように、都賀先生就任1年目で早くも結果を出した「東京ブラバンガールズ」。324日には杉並公会堂大ホールにて定期演奏会を開催しました。藤村女子にとっては、これが記念すべき50回目の定期演奏会。歴史ある吹奏楽部が都賀先生の指導で復活した年がちょうどメモリアルな演奏会になるというのも、何かのめぐり合わせだったのでしょうか。
オザワ部長も会場に足を運び、ワクワクするような気持ちで東京ブラバンガールズの演奏に耳を傾けました。
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最初に演奏されたのは、福島弘和作曲《海峡をわたる風》。吹奏楽コンクールの自由曲として都賀先生が選んだ曲です。7名の部員は基本はクラリネット×2、サックス×2、テナーサックス、トランペット、チューバ、打楽器ですが、曲の途中で別の管楽器や打楽器に持ち替えながら演奏。人数が少ないだけに、ちょっとしたほころびも目立ってしまう緊張感がありましたが、歌心が感じられる気持ちのいい演奏でした。
2曲目の天野正道作曲《沢地萃(たくちすい)》は、日本管楽合奏コンテストに出場した際の曲。助っ人3名が加わり、10名での演奏でした。日本管楽合奏コンテストは電子楽器の使用もOKということで、ボーカロイド研究会の2名はシンセサイザーを演奏。吹奏楽とシンセサイザーの融合は想像していたよりも面白いサウンドになっていました。天野先生らしいロマンティシズムあふれるメロディを、都賀先生の指揮によって美しく表現する東京ブラバンガールズ…。特に、アルトサックスの演奏が印象的でした。
3曲目はゲストにソプラノ・宮下文香さん、テノール・麻山皓太さん、さらに藤村女子の合唱部を加え、福島弘和作曲《戦場から妻への絵手紙》が演奏されました。手紙の朗読やスライドも交えて、しっとりした感動的な音楽が奏でられ、聴いていると思わず胸が熱くなるほどでした。
その後、ポップス曲を経て、ゲストの超絶トランペット奏者であるエリック・ミヤシロさんとコラボ!《スタートレックのテーマ》では宇宙まで突き抜けるようなハイトーンが響き渡り、《ミスティー》では叙情的なバラードを歌い上げるエリックさん。そんな素晴らしいアーティストと共演できるブラバンガールズが羨ましい!
そして、アンコールには定番の《宝島》。テンポゆっくりめの、ほっこりとさせるような演奏でした。
たった7名ではありましたが、それを感じさせないコンサートだったと思います。極小編成だからこそ、助っ人や合唱部やダンス部、ゲストの方たちにも出演していただく必要があったのでしょう(ときには顧問の砂山瑞穂先生も演奏に参加していました)。けれど、それによって従来の「吹奏楽部の定期演奏会」という枠にとらわれない可能性を追求できたように思います。
何事もプラスに変えることができるんですよね。
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では、定期演奏会終了後の顧問の都賀城太郎先生のコメントです!
「人数が少ないということがマイナスなのではなく、演奏する側も作曲や編曲をされる方も、みんなが工夫していけば必ず良い音楽ができるのだ、ということを世の中の方たちにお伝えしたかったので、今日はとても良い機会になりました。1年前に藤村に来たころは、基礎合奏もできないし、音も合わないし、僕が言うことに対して子供たちはすごく反発していたんですけど、だんだん結果が出てきたり、演奏会などに出たりするうちに僕の思いを理解してくれて、今は和気藹々とできるようになりました。最近では僕自身、春日部共栄を率いて全国大会で指揮を振っていたころよりのびのびやっているね、と言われることが多いんです()。ただ、いずれ子供たちをそういうステージまで連れていきたいですね。この1年で小編成の輪が広がり、『藤村女子の活動に勇気をもらった』とたくさんの方が言ってくださったんで、まずは小編成から徐々にスパイラルを描いて大きくしていきたいなと思っています」
東京ブラバンガールズの1年目(そして、50年目でもあります)は、未来を感じさせるコンサートで幕を下ろしました。
今、すでに2年目の幕が上がっています。今年はどんな音楽を聴かせてくれるのか、どんな驚きを与えてくれるのか、心から楽しみです!